一般貨物実務ノート一般貨物自動車運送事業の許可と実務

2026年から変わったところ

運送を、他社に頼むとき。

自分では運ばずに他の事業者に運んでもらう ── その場面に、 2026年から新しい義務が入りました。書面を交付すること、委託の重なりを制限するよう努めること、 そして誰が実際に運んだのかを記録して備え置くことです。

「利用運送」という言葉が3つの意味で使われているので、まずそこを切り分けます。

出典:貨物自動車運送事業法 第2条・第12条・第23条の4・第24条・第24条の2〜第24条の5/貨物利用運送事業法 第2条・第3条・第20条/同施行規則 第7条(2026年8月時点の条文を e-Gov 法令検索で確認)

まず、答えから ── 「利用」は3つあります

同じ言葉で違うものを指しているので、調べものが噛み合わなくなります。

言葉何のことか根拠手続き
貨物自動車
利用運送
一般貨物・特定貨物の事業者が、他の一般貨物・特定貨物の事業者の運送を利用すること貨物自動車運送事業法 第2条事業計画の一項目(行うかどうかの別を書く)
第一種貨物
利用運送事業
実運送事業者の運送を利用して、運送を引き受ける事業そのもの。車は持たない貨物利用運送事業法 第3条登録(許可ではない)。基準資産額 300万円以上
他社の運送を
利用する
実際に他の事業者に運ばせること(いわゆる下請けへの委託)同法 第23条の4・第24条・第24条の5🔴 2026年から義務が付きました

第二種貨物利用運送事業は、船舶・航空・鉄道の利用運送と、その前後の集配を一貫して行う事業で、こちらは許可です(貨物利用運送事業法 第20条)。 トラックだけなら第一種です。

混ざりやすいのは上の2つです。 「貨物自動車利用運送を行う」は自分の事業計画に書く項目で、一般貨物の許可の中に含まれます。 「第一種貨物利用運送事業」は別の法律に基づく別の登録で、車を持たない事業者のためのものです。 要件も手続きも別なので、取り違えると準備するものが変わります。

🔴 書面の交付は、2か所で義務になっています

相手が誰かで、条文が変わります。どちらも「しなければならない」で、努力義務ではありません。

12条

真荷主とのあいだ ── 相互に交付

真荷主及び一般貨物自動車運送事業者は、運送契約を締結するときは、国土交通省令で定める場合を除き、次に掲げる事項を書面に記載して相互に交付しなければならない

⇒ ★ 「相互に」です。事業者だけが出すのではなく、荷主の側にも交付義務があります。

24条2項

下請けに出すとき ── 交付する

他の一般貨物事業者の運送を利用するときは、省令で定める場合を除き、その事業者に対して書面を交付しなければならない

書く内容は同じ3つ

運送の役務の内容及びその対価
② 運送以外の役務が含まれる場合は、その内容及び対価
③ その他 国土交通省令で定める事項

⇒ ★ 運送と、それ以外(荷役・附帯業務など)を分けて書く構造になっています。

⭕ 電磁的方法でもよい

第24条第3項:相手の承諾を得て、書面に記載すべき事項を電磁的方法で提供できます。この場合書面を交付したものとみなす

下請法(現・中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律)第4条の明示や書面交付をしたときは、その重複部分は記載不要です(第24条第2項ただし書)。

出典:貨物自動車運送事業法 第12条・第24条第2項・第3項。 「真荷主」とは、自らの事業に関して貨物自動車運送事業者または貨物利用運送事業者と運送契約を締結して運送を委託する者であって、それらの事業者以外のもの(第12条第2項)。いちばん上流にいる、本当の荷主のことです。

委託の重なりを制限する ── こちらは「努力義務」

条文の語尾が違います。書面の交付は「しなければならない」、こちらは「努めなければならない」です。

第23条の4(真荷主から引き受けた貨物の運送に係る二以上の段階にわたる委託の制限)

「一般貨物自動車運送事業者は、真荷主から引き受けた貨物の運送について他の貨物自動車運送事業者の行う運送を利用するときは、当該貨物の運送について当該他の貨物自動車運送事業者からの二以上の段階にわたる委託を制限するために必要な措置を講ずるよう努めなければならない

そのうえで、第24条第1項が4つの措置を並べています。こちらも努力義務です。

講ずるよう努める措置
利用する運送に要する費用の概算額を把握した上で、その概算額を勘案して利用の申込みをすること
🔴 自らが引き受ける運送について荷主が提示する運賃・料金が、その概算額を下回る場合は、その荷主に対し、運賃・料金について交渉をしたい旨を申し出ること
その運送について、その事業者からの二以上の段階にわたる委託の制限その他の条件を付すること
その他、国土交通省令で定める措置

出典:貨物自動車運送事業法 第23条の4・第24条第1項。 ⇒ ★ 二号は「安く受けたなら、荷主に交渉を申し出る」という趣旨の条文です。 下請けに払う額の見当を先に付けておかないと、この条文は使えません。順番として「概算額の把握」が先に来ています。

🔴 実運送体制管理簿 ── 誰が実際に運んだかを残す

2026年からのいちばん重い義務です。努力義務ではありません。

請負階層と、通知の向き 真荷主から元請事業者が引き受け、そこから下請けへ委託が重なると請負階層が増えていきます。元請事業者は実運送体制管理簿を作り、下請けへ元請連絡事項を通知し、実際に運ぶ事業者は元請へ折り返し通知します。 真荷主 事業者以外の荷主 元請事業者 請負階層 0 1次 請負階層 1 2次 ここから先を制限する努力義務 実運送体制管理簿をつくる(第24条の5第1項) 運送が完了した日から1年間、営業所に備え置く 元請連絡事項を 下へ通知(2項・3項) 実際に運んだ事業者は、元請へ折り返し通知(第4項) 請負階層=真荷主との運送契約の後に締結された運送契約の数(第24条の5第1項第3号)

出典:貨物自動車運送事業法 第24条の5。

いつ作るか

真荷主から引き受けた貨物の運送(その貨物の重量が国土交通省令で定める重量以上のものに限る)について、他の貨物自動車運送事業者の行う運送を利用したとき

災害その他緊急やむを得ない場合を除き運送ごとに作ります。

いつまで置くか

その運送が完了した日から1年間営業所に備え置く

電磁的記録でも構いません(条文が明記)。

何を書くか

実運送を行う事業者の商号または名称
② その事業者が実運送を行う貨物の内容および区間
③ 🔴 その事業者の請負階層
④ その他 省令で定める事項

🔴 「請負階層」の定義

条文が定義しています。「当該貨物自動車運送事業者が実運送を行う貨物の運送に関して締結された運送契約のうち、真荷主との運送契約の後に締結された運送契約の数」。

⇒ ★ 何次下請けかを、数字で書くということです。

通知が3方向に走ります

誰から誰へ何を
2項元請事業者 → 利用する他の事業者元請連絡事項=①元請事業者の連絡先 ②その事業者が運送する貨物の真荷主の商号または名称 ③省令事項
3項元請以外の事業者 → さらに利用する他の事業者元請連絡事項 + その事業者の請負階層 + 省令事項
2項の通知を受けていない等で知ることができない場合は、この限りでない
4項実際に運んだ事業者 → 元請事業者真荷主ごとに、第1項各号の事項(=管理簿に書く内容)を折り返し通知

⇒ ★ 元請だけの話ではありません。途中の事業者にも、実際に運ぶ事業者にも、それぞれ通知の義務があります。 下から上へ情報を戻す仕組み(4項)があるので、元請は自分が知らない末端まで書けるようになっています。

規模が大きいと、さらに2つ増えます

条文が「特別一般貨物自動車運送事業者」という区分を作りました。

誰のことか

貨物自動車利用運送を行う一般貨物自動車運送事業者のうち、その行う貨物自動車利用運送の規模が国土交通省令で定める規模以上であるもの(第24条の2第1項)。

「省令で定める規模」は本サイトで確認していません。

1

運送利用管理規程

健全化措置の実施に関する規程を定め、遅滞なく届出。変更したときも同様。遵守義務もあります(3項)。

定める事項は4つ:運営の方針/措置の内容/管理体制/運送利用管理者の選任に関する事項。

2

運送利用管理者

規程の届出後、速やかに事業運営上の重要な決定に参画する管理的地位にある者のうちから1人を選任(第24条の3)。

選任したら遅滞なく氏名および役職を届出解任も同様

その人の職務

①運営の方針を決定する ②実施と管理の体制を整備する ③実運送体制管理簿を作成する場合は、その作成事務を監督する

誠実にその職務を行う義務があり、相手方が物流統括管理者を選任している場合は連携が求められます(第24条の4)。

出典:貨物自動車運送事業法 第24条の2〜第24条の4。 ⇒ ★ 「管理的地位にある者のうちから」と書かれているので、担当者に投げる形は想定されていません。

このページで確かめていないこと

🔴 この規定は、肝心なところが国土交通省令に投げられています。

項目状態
条文そのもの(第12条・第23条の4・第24条・第24条の2〜5)2026年8月時点の条文を e-Gov 法令検索で確認しました
実運送体制管理簿が要る「省令で定める重量」🔴 確認していません。これが分からないと、自分に義務があるかが決まりません
「特別一般貨物自動車運送事業者」の省令で定める規模🔴 同上
書面の交付が不要になる「省令で定める場合」確認していません
管理簿を運送ごとに作らなくてよい「省令で定める場合」確認していません
正確な施行日国土交通省は令和8年4月1日としています。本サイトが確認できたのは「2026年8月時点の条文に入っている」ことまでです
違反したときの扱い確認していません

⇒ ★ 「自分に義務があるかどうか」は、省令の数字が分からないと決まりません。 管轄の運輸支局・地方運輸局の最新の資料で必ず確かめてください。

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改正のあとの姿で書いています

『一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)が自分でわかる本』は、令和7年法律第60号の反映後に書いた一冊です。 許可の要件から、許可のあとに続く義務までを、条文と公示の文言で押さえています。チェックリストは136項目です。

著者:貨物運送手続き実務ノート ── 当サイトの運営者です。サイトと本は同じ人が書いています。

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