許可のあとに続くもの
来る人も、根拠になる条文も、行き着く先も違います。 巡回指導をするのは民間の指定法人で、その仕事は指導です。 処分ができるのは国のほうで、根拠も別の条文にあります。
この2つを混ぜて考えると、「巡回指導で許可を取り消される」という誤解になります。取り消せるのは別の主体です。
出典:貨物自動車運送事業法 第23条・第33条・第38条・第39条・第40条・第41条・第60条・第64条・第65条(e-Gov 法令検索の条文で確認)
条文の上では、この表のとおりに分かれています。
| 巡回指導 | 監査(報告の徴収・立入検査) | |
|---|---|---|
| 誰がするか | 地方貨物自動車運送適正化事業実施機関(法第38条) | 国土交通大臣(その職員)(法第60条第4項) |
| 根拠の条文 | 法第39条第1号の「指導」 | 法第60条の報告の徴収・立入検査 |
| その主体の性格 | 一般社団法人または一般財団法人で、国土交通大臣の指定を受けたもの | 国 |
| できること | 指導・啓発・苦情処理・通知 | 検査・質問。そのうえで処分(法第33条) |
| 行き着く先 | 悪ければ国への通知(法第39条第5号) | 使用停止・事業停止・許可の取消し |
⚠ 巡回指導そのものに処分の効力はありません。ただしそこで見られたものが、処分をする側へ渡る道が条文にあります(法第39条第5号)。
出典:貨物自動車運送事業法 第33条・第39条・第60条。
条文はこう定めています(法第38条第1項)。
「貨物自動車運送に関する秩序の確立に資することを目的とする」法人であること。民間の法人です。
第39条の事業を適正かつ確実に行うことができると認められるものを、その申請により指定します。
運輸監理部・運輸支局の管轄区域を勘案して定める区域ごとに、1つだけ。競合する機関はありません。
名称・住所・事務所の所在地・区域が公示されます(第2項)。誰が指定されているかは公開情報です。
⚠ 条文が書いているのは「一般社団法人または一般財団法人」までです。実際にどの法人が指定されているかは公示で確認してください。本サイトは個別の法人名を確認していません。
この機関は、国から独立して勝手に動いているわけでもありません。 国土交通大臣は運営に改善が必要と認めれば改善命令を出せますし(法第40条)、 命令に違反すれば指定を取り消すことができます(法第41条)。
法第39条が「地方適正化事業」として列挙しているものです。
| 号 | 事業 |
|---|---|
| 一 | 指導。輸送の安全を阻害する行為の防止その他、この法律や命令の遵守に関して、貨物自動車運送事業者に対して行う ── 巡回指導はここです |
| 二 | 事業者以外の者が貨物自動車運送事業を経営する行為(=白トラ)の防止を図るための啓発活動 |
| 三 | そのほか、貨物自動車運送に関する秩序の確立に資するための啓発活動・広報活動 |
| 四 | 事業者または荷主からの苦情を処理すること |
| 五 | 輸送の安全を確保するために行う事業者への通知その他、国土交通大臣が法の施行のためにする措置に対して協力すること |
出典:法第39条。指導の対象には貨物軽自動車運送事業者(黒ナンバー)も含まれています(同条の括弧書き)。
巡回指導で新しく何かを作るわけではありません。すでに残しているはずのものが、そのまま出てきます。
1年保存。点呼の「方法」まで記録することになっているので、電話が続いていればそこが見えます。
1年保存。休憩・睡眠の地点と日時、荷主都合の待機、荷役作業の時間まで。
どちらも3年。台帳は「その人が運転者等でなくなってから3年」で起点が違います。
⭕ 保存期間と記録すべき事項は、条文で全部決まっています。 点呼と記録のページに一覧表を置いてあります。準備するものは、そこにある以上のものではありません。
法第60条第4項が、立入検査の範囲を具体的に書いています。
「その職員に、貨物自動車運送事業者の事務所その他の事業場に立ち入り、業務若しくは経理の状況若しくは事業の用に供する施設、帳簿、書類その他の物件を検査させ、又は関係者に質問させることができる。」
立入りの前に、事業に関し報告をさせることができます(第1項)。国土交通省令の定めるところによります。
立入検査をする職員は身分を示す証明書を携帯し、関係者の請求があったときは提示しなければならない(第6項)。求めてよいものです。
「第四項及び第五項の規定による権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない」(第7項)。
国土交通大臣は地方実施機関の事務所にも立ち入り、業務の状況や帳簿を検査できます(第5項)。一方通行ではありません。
出典:法第60条。
一般貨物自動車運送事業者に対してできることが、条文に書かれています。
| できること | 期間 |
|---|---|
| 自動車その他の輸送施設の、その事業のための使用の停止 | 6月以内において期間を定めて |
| 事業の全部または一部の停止 | 6月以内において期間を定めて |
| 第3条の許可の取消し | ── |
出典:法第33条。「6月以内」がかかるのは停止のほうで、取消しには期間がありません。
この法律・命令・これらに基づく処分、道路運送法第83条・第95条・第84条第1項の規定による処分、または許可・認可に付した条件に違反したとき。
⚠ 「許可に付した条件」も入っています。条件付きの許可なら、その条件が処分の根拠になります。
2025年改正で新設される5年ごとの更新は、この話とつながっています。 日々の記録と選任の実態が、更新のときにまとめて効いてくるという構図です。 ⚠ ただし更新制の施行日は、2026年8月時点でまだ政令が出ていません。
ここが、待機時間を記録しておく実務上の意味です。
「荷主は、貨物自動車運送事業者がこの法律又はこの法律に基づく命令を遵守して事業を遂行することができるよう、必要な配慮をしなければならない」。
荷主には元請から先の委託者、貨物を受け取る者・引き渡す者で他人のために行う者も含まれます。
違反行為が荷主の指示に基づき行われたことが明らかであるとき、または主として荷主の行為に起因すると認められ、事業者への処分だけでは再発防止が難しいとき、荷主に対しても勧告ができます。
⚠ 勧告の前に、その荷主の事業を所管する大臣の意見を聴きます(第2項)。
「国土交通大臣は、第一項の規定による勧告をしたときは、その旨を公表するものとする」(第3項)。
⇒ ★ 「明らかである」と言えるかどうかは、記録があるかどうかで決まります。集貨地点等の到着・待機・出発の日時を残しておく意味はここです。
出典:法第64条・第65条。
巡回指導や監査とは別に、こちらは自分から出すものです。
「一般貨物自動車運送事業者は、その事業用自動車が転覆し、火災を起こし、その他国土交通省令で定める重大な事故を引き起こしたときは、遅滞なく、事故の種類、原因その他国土交通省令で定める事項を国土交通大臣に届け出なければならない」(法第23条)
⚠ どの事故が「重大な事故」に当たるかは国土交通省令(自動車事故報告規則)にあります。本サイトはその一覧をまだ確認していません。 なお事故の記録そのものは、営業所で3年保存です(輸送安全規則 第9条の2)。
🔴 よく語られる数字のほとんどは、条文には書かれていません。
| 項目 | 状態 |
|---|---|
| 巡回指導・監査・処分の主体と根拠 | 法第38条・第39条・第60条・第33条の条文で確認しました |
| 巡回指導の評価区分(A〜Eなど) | 条文にありません。実施機関の運用です。本サイトは当たれていません |
| チェック項目の数 | 同上。条文には項目数の定めがありません |
| 巡回指導の頻度・周期 | 同上 |
| 「速報」と呼ばれる通知の基準 | 法第39条第5号に通知という行為の根拠はありますが、どの状態で通知するかの基準は確認していません |
| 行政処分の日車数・点数 | 公示(処分基準)にあります。本サイトは当たれていません |
| 重大な事故の範囲 | 自動車事故報告規則。確認していません |
| 指定されている法人名 | 公示で確認できますが、本サイトは確認していません |
⇒ ★ 「A評価なら3年に1回」といった話は、条文の外にあります。 本サイトは条文で言えるところまでを書き、それ以外は書いていません。実務では、管轄の実施機関と運輸支局の公表資料で確かめてください。
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『一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)が自分でわかる本』の第7章は、点呼と記録から巡回指導、車両の増減までを扱っています。 許可を取ることより、取ったあとに続く分量のほうが投資判断には効きます。チェックリストは136項目です。
著者:貨物運送手続き実務ノート ── 当サイトの運営者です。サイトと本は同じ人が書いています。
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